相続放棄とは?その手続きと注意点

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を受け継ぐ権利を放棄し、相続人としての地位を失うことを意味します。相続にはプラスの財産(現金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金やローンなど)も含まれるため、相続放棄はマイナスの財産を引き継がないための有効な手段として利用されることがあります。

この記事では、相続放棄の基礎知識から、具体的な手続き方法や注意点について詳しく解説します。

1. 相続放棄の基本知識

相続放棄は、法定相続人が自分の相続権を放棄する手続きです。相続を放棄することで、被相続人の財産を一切受け継がないだけでなく、借金やその他の債務も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄を選ぶ理由

相続放棄を行う主な理由は、次のような状況です:

  • 被相続人に多額の借金がある場合:借金などのマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続放棄をすることで借金を引き継がずに済みます。
  • 遺産の分配を辞退したい場合:家族間で円満な相続を進めるために、相続を辞退するケースもあります。
  • 遠い親戚が亡くなった場合:親しい関係でない場合や、相続する意思がない場合にも相続放棄が選択されることがあります。

2. 相続放棄の効果

相続放棄を行うと、相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。これは、相続放棄が確定した時点から、被相続人の財産や債務に一切関与しないことを意味します。

相続放棄の法的効果

  • プラスの財産も受け取らない:相続放棄を行うと、被相続人の財産を全て放棄することになります。プラスの財産(不動産や預貯金など)も受け取ることはできません。
  • マイナスの財産も相続しない:借金や保証債務など、マイナスの財産も一切引き継ぐことがありません。
  • 次の順位の相続人に権利が移る:相続放棄をすると、次の順位の相続人(例えば、兄弟姉妹や甥・姪など)が相続の権利を持つことになります。

3. 相続放棄の手続き

相続放棄は、相続開始を知った日から 3ヶ月以内 に行う必要があります。この「3ヶ月」の期間は、熟慮期間と呼ばれ、相続人が相続するか放棄するかを決めるための期間です。この期間内に適切な手続きをしないと、相続放棄が認められなくなることがあります。

相続放棄の手順

  1. 相続の開始を確認する
    相続放棄は、相続が発生してから行う手続きです。相続開始を知った日から3ヶ月以内に決断し、手続きを進める必要があります。
  2. 家庭裁判所に申立てを行う
    相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。相続放棄申述書を提出し、必要な書類とともに申請します。
  3. 必要書類を準備する
    以下の書類が必要です:
    • 相続放棄申述書(家庭裁判所で入手可能)
    • 被相続人の死亡届や戸籍謄本
    • 自分(申請者)の戸籍謄本
    • その他、必要に応じて追加書類
  4. 家庭裁判所の審査を待つ
    提出後、家庭裁判所が申請内容を確認し、問題がなければ相続放棄が受理されます。放棄が認められると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付され、手続きが完了します。

4. 相続放棄の注意点

相続放棄は、慎重に行うべき手続きです。以下の点に注意しておくことが大切です。

(1) 相続放棄は取り消せない

相続放棄は一度行うと、原則として取り消すことができません。相続放棄をした後で、「やはり相続したい」と思っても、それは認められません。決断を下す前に、慎重に判断することが重要です。

(2) 相続放棄は全ての財産に適用される

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も一切放棄するものです。たとえ、現金や不動産などのプラスの財産があったとしても、相続放棄をするとこれらの財産も受け取ることはできません。

(3) 他の相続人への影響

相続放棄を行うと、その相続分は他の相続人に移ります。たとえば、子供が相続放棄をすると、配偶者や他の兄弟姉妹が相続人となる場合があります。このため、相続放棄を行う前に、他の相続人との相談や調整を行うことが重要です。

(4) 相続財産を処分すると放棄できなくなる

相続放棄を行う前に、相続財産を一部でも処分したり使用したりすると、その時点で相続を承認したとみなされ、相続放棄が認められなくなることがあります。例えば、亡くなった人の銀行口座からお金を引き出したり、不動産を売却したりすると、放棄ができなくなる恐れがあります。

5. 特定の状況下での相続放棄

相続放棄は特定の状況下で特に有効です。以下に、いくつかの典型的なケースを紹介します。

(1) 借金が多い場合

被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄を行うことでその借金を引き継がずに済むため、負債から解放されることができます。特に、保証債務などが残されている場合には、相続放棄をすることが有効です。

(2) 遠い親戚の相続

自分にとってあまり関係のない遠い親戚が亡くなった場合、相続に関心がない、または関与したくない場合に相続放棄を行うことがあります。特に、突然相続人として名指しされた場合などに選択されることがあります。

(3) 家族間の合意

家族内で、特定の相続人が相続財産を受け継ぎたいと望む場合、他の相続人が相続放棄を行うことで、スムーズに財産の分配が進むことがあります。このような場合には、相続放棄をする相続人と受け取る側との間で事前に十分な話し合いを行うことが必要です。

まとめ

相続放棄は、被相続人の財産や負債の相続において、家族や自身の将来に大きな影響を与える重要な選択肢です。プラスの財産だけでなく、借金や負債などのマイナスの財産も相続しないため、特に負債が多い場合や自分にとって不要な相続が発生した場合に有効です。

ただし、相続放棄には法律的な制約や手続きがあり、慎重に行う必要があります。専門家(弁護士や司法書士)に相談しながら手続きを進めることで、確実に放棄手続きが完了し、家族や自身にとって最良の選択ができるでしょう。

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この記事を書いた人

行政書士
京都府福知山市を拠点に相続手続きでお困りの方や遺言書の作成をサポートしています。

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