相続財産評価とは何か

相続財産評価とは、相続が発生した際に被相続人(故人)が所有していた財産の価値を適正に算定する手続きを指します。相続税の課税額を決定するためには、相続財産の評価が重要なステップとなります。

財産の評価は法律や税制に基づいて行われ、評価基準は財産の種類によって異なります。評価額が正確でなければ、相続税の過不足が生じるため、正確かつ適切な評価が求められます。

相続財産の種類

相続財産には大きく分けて、プラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)があります。プラスの財産には、不動産、現金、預貯金、株式、有価証券などが含まれ、これらが評価の対象となります。消極財産には、故人の借入金や未払いの税金、ローンの残高などが含まれますが、これは評価というよりも、相続財産から差し引く形で考慮されます。

1. 不動産

不動産は相続財産の中で最も大きな割合を占めることが多い財産です。土地や建物などの不動産の評価には、いくつかの方法があり、主に「路線価方式」や「固定資産税評価額」を用いて算定されます。

  • 路線価方式: 路線価は、国税庁が公表している土地の価格の指標で、道路に面する標準的な土地の1平方メートル当たりの価格です。相続税評価では、この路線価をもとに土地の価値を評価します。一般的には、公示地価の約80%程度の金額が路線価とされています。
  • 固定資産税評価額: 市町村が不動産に課税する固定資産税の基準となる評価額です。これは、不動産の売買価格よりも低く設定されていることが多いですが、相続財産評価の際には参考として使用されます。

土地の形状や位置、利用目的(住宅地、商業地、農地など)によっても評価額は異なるため、専門家による詳細な査定が必要となる場合があります。

2. 預貯金・現金

預貯金や現金は、相続発生時点の残高に基づいて評価されます。預金通帳や銀行の残高証明書を基に、そのままの金額が評価額となります。

3. 有価証券(株式・債券など)

株式や債券などの有価証券も相続財産に含まれます。評価方法は証券の種類によって異なります。

  • 上場株式: 株式市場で公開取引されている株式については、相続発生日の終値、または前後3ヶ月間の平均株価を基に評価額が算定されます。
  • 非上場株式: 上場していない企業の株式は、純資産価額方式や配当還元方式などを用いて評価します。純資産価額方式は企業の資産と負債を基にした純資産を評価する方法で、配当還元方式は過去の配当金額を基に評価します。

4. 生命保険金

被相続人が生命保険に加入していた場合、受取人に支払われる保険金も相続財産に含まれます。ただし、非課税枠が設定されており、法定相続人1人当たり500万円までの保険金は相続税の対象外となります。この非課税枠を超える金額が相続財産として評価され、課税対象となります。

5. 動産(車、宝石、骨董品など)

車や宝石、美術品、骨董品などの動産も相続財産として評価されます。これらは市場価値を基に評価されることが多く、専門の鑑定士による査定が必要な場合もあります。特に、美術品や骨董品の評価は主観的な要素が大きいため、専門家の意見を仰ぐことが重要です。

6. 債務(借金、未払いの税金など)

被相続人が残した借金やローンなどの債務も、相続財産の一部です。これらの債務は相続財産の総額から控除されるため、正確に把握しておく必要があります。例えば、住宅ローンや事業に関する借入金、未払いの所得税や住民税なども相続財産の計算に影響を与えます。

相続税申告における評価の重要性

相続税は、相続財産の合計額が基礎控除額を超えた場合に課税されます。基礎控除額は、「3,000万円 + 法定相続人1人当たり600万円」です。したがって、相続財産の評価が高くなると、その分、相続税の負担が大きくなることになります。正しい評価を行うことで、適正な税額を算定し、過剰な課税を避けることが重要です。

適切な相続財産評価が求められる理由

  1. 過大評価による不必要な税負担: 相続財産の評価が過大であると、相続税の負担が不必要に大きくなってしまいます。特に不動産などの評価は複雑であり、専門家に依頼して適正に評価することが重要です。
  2. 過小評価によるペナルティのリスク: 逆に、財産を過小評価してしまった場合、税務署から指摘を受け、追徴課税が科されるリスクがあります。また、意図的に財産を隠したり、評価額を低くする行為は、重加算税の対象となることがあります。

相続財産評価における専門家の役割

相続財産の評価は、種類や状況によって非常に複雑になることがあります。そのため、専門家に依頼して、正確な評価を行うことが一般的です。

評価額を見直すための対策

相続財産の評価額を最適化し、相続税の負担を軽減するためには、いくつかの対策が考えられます。

  1. 小規模宅地等の特例: 住居用や事業用の土地については、特例として評価額を最大80%減額できる制度があります。これにより、相続税負担を大幅に軽減することが可能です。
  2. 生前贈与の活用: 生前に財産を贈与することで、相続発生時の財産評価を減少させることができます。ただし、生前贈与には贈与税がかかる場合があるため、専門家のアドバイスが必要です。
  3. 信託の活用: 信託を活用することで、財産の管理や分割の方法を柔軟に設定することができます。信託銀行や弁護士の協力のもと、財産の円滑な承継を図ることが可能です。

まとめ

相続財産評価は、相続税申告において非常に重要な役割を果たします。正確な評価を行うことで、過大な税負担を避けると同時に、税務署からの指摘やペナルティのリスクも回避できます。財産の種類や評価方法については専門的な知識が必要な場合が多いため、専門家に相談することが不可欠です。また、相続財産を見直し、適切な対策を講じることで、相続税の負担を軽減し、円滑な財産承継を実現することができます。

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この記事を書いた人

行政書士
京都府福知山市を拠点に相続手続きでお困りの方や遺言書の作成をサポートしています。

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