贈与税と相続税の違い

贈与税と相続税は、財産を他人に譲渡する際にかかる税金ですが、それぞれ異なるタイミングや仕組みで課税されます。具体的には、贈与税は生前に財産を他人に贈与した場合に発生する税金で、相続税は被相続人(故人)が亡くなった後に相続人が財産を受け取った際に課される税金です。

この2つの税金は、どちらも財産の移転に伴って課税されるという点では共通していますが、課税対象や計算方法、税率などに大きな違いがあります。この記事では、贈与税と相続税の違いについて詳しく解説し、それぞれの特徴や活用法を比較していきます。

贈与税とは

贈与税は、生前に財産を贈与する際に課される税金です。財産を贈与した側(贈与者)ではなく、財産を受け取った側(受贈者)に課税されます。たとえば、親から子供に現金や不動産を生前に譲渡する場合、子供が贈与税を支払う義務を負います。

贈与税の特徴

  1. 年間110万円の非課税枠 贈与税には年間110万円の基礎控除があります。この基礎控除を利用することで、毎年110万円までは贈与税が課されません。したがって、贈与者が毎年少額ずつ贈与することで、贈与税を節税することが可能です。
  2. 贈与税の税率 贈与税は、累進課税方式により、贈与される金額が多くなるほど高い税率が適用されます。贈与税の税率は、受贈者が直系尊属(親や祖父母)から贈与を受ける場合と、それ以外の場合で異なります。
    • 直系尊属から子や孫への贈与: 税率は10%から最大55%までの累進課税が適用されます。
    • その他の贈与: 税率は20%から最大55%の累進課税です。
贈与財産の価額直系尊属への税率その他の税率
200万円以下10%10%
400万円以下15%20%
600万円以下20%30%
1,000万円以下30%40%
1,500万円以下40%45%
3,000万円以下45%50%
3,000万円超55%55%
  1. 贈与税の申告と納付 贈与税は、1年間に贈与された財産の総額が基礎控除額(110万円)を超えた場合に申告が必要です。申告期限は、贈与が行われた翌年の3月15日までです。この期限を過ぎると、延滞税や加算税が課せられる場合があります。

相続税とは

相続税は、被相続人が亡くなった際に相続財産を受け取った相続人に対して課される税金です。相続税は、相続が発生した時点で存在するすべての相続財産(現金、不動産、有価証券など)に対して課税されます。相続税の課税対象や基準は法律で定められており、相続財産の総額が一定額を超えた場合に相続税が課されます。

相続税の特徴

  1. 基礎控除 相続税にも、一定額の基礎控除があります。相続財産の総額が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告や納税は不要です。基礎控除額の計算式は以下の通りです。scssコードをコピーする基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) たとえば、法定相続人が2人いる場合、基礎控除額は4,200万円となり、相続財産がこの額を超えた場合に相続税が課税されます。
  2. 相続税の税率 相続税も贈与税と同様に累進課税が適用されます。相続財産の総額が多いほど、相続税率が高くなります。
課税遺産総額税率控除額
1,000万円以下10%なし
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
  1. 相続税の申告と納付 相続税の申告は、相続の開始(通常は被相続人の死亡日)から10ヶ月以内に行う必要があります。申告が必要なのは、相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合です。この期限を守らないと、延滞税や加算税が課せられることがあります。

贈与税と相続税の違い

贈与税と相続税には、いくつかの明確な違いがあります。以下に、主要な違いをまとめます。

1. 課税されるタイミング

  • 贈与税: 生前に財産が贈与された場合に課税されます。贈与は、個人間の財産移転があった年に課税対象となります。
  • 相続税: 被相続人が亡くなった後に、その財産を相続する際に課税されます。相続財産の全体が課税対象となります。

2. 基礎控除額

  • 贈与税: 年間110万円の非課税枠があります。この範囲内であれば、贈与税の申告は不要です。
  • 相続税: 相続税の基礎控除額は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。控除額は法定相続人の数によって増加します。

3. 税率

  • 贈与税: 贈与税の税率は、贈与される金額に応じて累進課税が適用されます。直系尊属からの贈与は、特定の優遇措置が適用される場合がありますが、一般的には20%から55%の範囲で課税されます。
  • 相続税: 相続税も累進課税が適用されますが、相続財産全体に対する税率は10%から55%までとなります。相続税の方が、控除額が大きいこともあり、税率がやや緩やかに感じられる場合があります。

4. 対象財産

  • 贈与税: 生前に贈与された財産が対象です。現金、不動産、有価証券、動産(車や宝石など)など、贈与されたすべての財産が対象となります。
  • 相続税: 被相続人の死亡時に所有していたすべての財産が相続税の対象となります。現金、不動産、有価証券に加え、死亡保険金なども相続税の対象になる場合があります。

5. 節税の方法

  • 贈与税: 基礎控除の範囲内で毎年少額ずつ贈与することで、贈与税を軽減することができます。また、「教育資金の一括贈与の非課税制度」や「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」など、特定の目的に対して非課税枠を活用する方法もあります。
  • 相続税: 小規模宅地等の特例や生命保険の非課税枠(法定相続人1人当たり500万円)を利用することで、相続税の負担を軽減することができます。また、生前贈与を組み合わせた相続対策も有効です。

贈与税と相続税を組み合わせた節税対策

贈与税と相続税の違いを理解した上で、これらを組み合わせた節税対策を行うことが効果的です。例えば、生前贈与を活用することで、相続財産を減らし、相続税の基礎控除内に収めることができます。また、年間110万円の非課税枠を利用して、贈与税を節税しながら、相続時の財産総額を減少させることも可能です。

ただし、贈与のタイミングや金額については、しっかりとした計画が必要です。相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続税の課税対象となるため、早めに対策を講じることが重要です。

まとめ

贈与税と相続税は、いずれも財産を他者に移転する際に課税される税金ですが、課税のタイミングや控除額、税率などに大きな違いがあります。生前に財産を譲渡する場合は贈与税がかかり、相続が発生した際には相続税が課されます。

これらの違いを理解し、適切な節税対策を講じることで、税負担を軽減しつつ、円滑な財産承継を行うことが可能です。特に、生前贈与を活用した相続税対策や、小規模宅地等の特例を利用した節税方法など、効果的な手段を取るためには、専門家の助言を受けることが推奨されます。

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この記事を書いた人

行政書士
京都府福知山市を拠点に相続手続きでお困りの方や遺言書の作成をサポートしています。

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